委員長のご挨拶

2021年度ヒューマンコミュニケーショングループ運営委員長  間瀬健二 (名古屋大学)

 

 2021年度ヒューマンコミュニケーショングループ(HCG)運営委員長を仰せつかりました名古屋大学の間瀬健二です。東大の原島博先生の研究グループの知的符号化通信の研究に触発され、NTT時代に顔画像の表情認識など画像処理を使ったヒューマンインタフェース応用、すなわちPerceptual User Interface (PUI) に興味を持ちこの分野に飛び込みました。さらに表層的なPUIでは表情やジェスチャの意図が伝わらないと考えて、ATRではコミュニケーションの支援まで研究を広げてきました。その後、コミュニケーションの用いられる文脈理解や、体験の獲得、集積、共有、体験の知識化といったことに展開し、最近では、技能伝承、介護支援やコーチング支援の研究に取り組んでいます。振り返ってみればHCGの分野に密接に関連する研究テーマに関わってきていたことになり、HCGの活動はまさしく、我が意を得たり、この分野のますますの発展に貢献したいと思う所存です。今回、運営委員長をお引き受けするにあたり、微力ながらHCGの活動を盛り上げられればと思います。よろしくお願いします。

 

 さて、2020年からつづく新型コロナウイルスのパンデミックは、我々の歴史において未曾有の事態をもたらしています。人と接することが危険であるという状況は、グローカルな社会活動、経済活動がコミュニケーションを核として発展してきた現代社会にとって、一層深刻な厄災といえましょう。幸いなことにデジタルコミュニケーション技術が準備されていたおかげで、社会活動が完全に停滞することなく、持ちこたえているのはありがたいことです。このパンデミックによって、我々が目指していた、コミュニケーションやビジネス・教育・研究のデジタル化、すなわちデジタルトランスフォーメーション(DX)が否応なしに進んだことは、皮肉なことですが、これを機に更なるデジタル化が進む一方で、コミュニケーションの本質を解明することが求められるでしょう。また負の側面も露わになってくるでしょう。コロナ禍がいずれ、早期に克服されると期待しますが、その際にもこれらのツールが利便性とともに活用され、あらゆる分野において以前とは異なる様式になるはずです。そのとき、ヒ
ューマンコミュニケーションの専門家として、我々はこれらのツールの再評価をしつつ新しい社会のコミュニケーションスタイルを設計することになるでしょう。また、デジタルトランスフォーメンションがもたらす社会的インパクトについて、便益だけでなくデメリットにも注意を払う必要があります。Society5.0の時代に、私たちはどのような社会に住みたいのか、真剣に考え、コミュニケーション学の観点から社会に提案していく必要があります。

 

 このような中で、運営委員長として今年度は2つの活動に重点を置くことを考えています。1つ目は、HCG内でのDXの深化です。既に、各研究会の活動はオンライン化が定着し、シンポジウムもオンライン実施を決定しました。その中で、対面で集まることで自然に出来ていた創発的な出会いや新たな研究の相談、若手の学会活動への関心誘発などに困難を感じていると思ます。DXにおける解を探求したいところです。また、オンライン化の追求だけでなく、ハイブリッド化においても、研究会等で新しい取り組みにチャレンジされるものと思います。そのような新しい取り組みの経験をHCG内で共有する場を設けたいと思います。2つ目は、HCGの財政基盤を強化するための長期プランの構築です。学会における技術研究報告(技報)の電子化によって研究会の安定した収入源だった技報の冊子講読予約が一旦ゼロになり、主な収入源は電子的な技報のダウンロード権収入に移行しました。いまはサブスクリプションシステム変更による登録者数減少の谷間にあります。これを乗り越えて、健全な財政基盤の上にグループの活動が進められるよう、実現性の高い将来構想を各研専と一緒に策定し、学会から信頼される運営を進めていきたいと思います。

 

この一年、運営委員会とグループのコミュニティ全体の皆様と協力してHCGの各分野の研究活動を盛り上げて行きたいと思いますので、ご協力のほどよろしくお願いします。