運営委員長のご挨拶(2011年度)

研究シーズを生み出すパワーを!

2011年度ヒューマンコミュニケーショングループ運営委員長 山田寛(日本大学)

運営委員長

日本は、今年、東日本で発生した大地震、津波、そして原発事故による未曽有の被害に見舞われました。被災された皆様ならびに関係者の皆様には心より哀悼の意を表しますとともに、一日も早い復興をお祈り申し上げております。

さて、本年で17期目を迎えるヒューマンコミュニケーショングループ(HCG)の委員長を務めさせていただくことになりました。どうぞよろしくお願いします。

実は、私が電子情報通信学会とかかわるようになったのは、前副会長(現HCG特別企画幹事)の原島先生が運営委員長をされていた「知的コミュニケーションと符号化第3種研究会」が、昭和63年8月26日から27日にかけて富士教育研修所で開催した合宿形式の研修会への参加でした。

そこで私は「人間を中心に据えた」新しい情報通信技術の開発を目指す当時新進気鋭の研究者たちの熱い議論に刺激され、ここで生まれつつある技術が私たちの生活を変えてくれる予感を覚えるとともに、さらに私の専門である心理学の研究パラダイムをも変えてくれる期待を抱いたことを思い出します。実際、その予感や期待に違わず、当時から現在までに、私たちを取り巻く情報通信環境や私の関係する心理学の研究もかなり様変わりしました。これには、まさに当研究会から現在のHCGに至るまでにかかわってきた研究者の方々の貢献が少なくないものと思っています。

ここで簡単にHCGの歴史を振り返ってみると、HCGの祖となる組織が上述の「知的コミュニケーションと符号化第3種研究会」(昭和63年1月発足、平成元年12月終了)でした。その後継組織としてHC研究会が平成2年4月に発足しました。この第一種研究会が現在のHCGの前身です。初代の委員長が当時京大の長尾先生でした。このHC研究会は5年間の活動を続けましたが、平成7年にソサイエティ制の発足とともに今のグループに移行しました。つまり、わずか5年で一つの研究会がグループという一つの大きな組織に発展を遂げた訳です。これはまさに当時の研究会活動の熱気と活気を示しているものではないでしょうか。もちろん、その熱気と活気は今でも引き継がれているものと信じています。HCGは、ヒューマンコミュニケーション基礎研究会、ヒューマン情報処理研究会、マルチメディア仮想環境研究会の3つの第一種研究会から出発しましたが、平成11年には福祉情報工学研究会が設立、今では第1種から第3種まで含めて12の研究会を擁するまでになりました。ちなみに、今年度からは食メディア研究会(旧料理メディア研究会)が第2種研として活動を始めます。また「未来世代から見たコミュニケーション科学の魅力と学習意欲向上」第3種研究会が新しく活動を開始します。

このように発展を遂げて来た背景には、歴代の委員長も述べているように、ソサイエティ制の中にあってのグループという組織形態であるからこそ果たし得る分野横断的機動性と、行場先生の言葉を借りれば、「私のような文学研究科に所属するような研究者でも,違和感なくのびのびと活動できる場がHCGの中では醸成されて」いるという特徴が挙げられるかと思います。が、そもそもそのように組織が設計された目的には、HCGが「人を中心に据えた」情報通信技術の新たな研究のシーズを生み出す場であり続けて欲しいという願いがあるものと思っています。果たして、そのような組織として、これまでになしてきたように、これからの時代の流れを新たに作り出すパワーをHCGは持ち続けることができるのか? これがHCGのこれからの大きな課題の一つなのではないかと思います。

そのような意味で本年度もHCG全体の活動の中では新たな形式になって3年目となるHCGシンポジウムには力を入れたいと思います。本年度のシンポジウムは12月7日から9日かけてサンポート高松(香川県高松市)で開催します。美味しいうどんとともに新たな研究のシーズも賞味できたらと思います。

末筆ではありますが、HCGの今後の発展に向けて多くの皆様からのご支援ご協力をよろしくお願いします。