「平成18年度ヒューマンコミュニケーション賞」決定

ヒューマンコミュニケーション賞規程に基づき,慎重な選考を重ねた結果,以下の計7件の発表に平成18年度HC賞を授与することに決定いたしました.

http://www.ieice.org/~hcg/jpn/modules/aboutus/prize_2007.php

■ HCS研究会

1. 水上陽介(香川大)・内田啓治(エス・シー・エー)・澤田秀之(香川大) (HCS2006-13)
「触覚提示デバイスを用いたなぞり感覚の提示」
【選考理由等】
形状記憶合金にパルス電流を流して収縮させる触角提示装置を開発し,なぞり感覚を実現した.このシステムは1mm程度の狭い間隔で配置でき(従来は5mmとか1cm),低消費電力,かつ,金属疲労も無いとのことで実用性の高さが評価できる.

2. 松田昌史(NTT) (HCS2006-44)
「顔写真の提示が信頼行動の発現にもたらす影響」
【選考理由等】
顔写真提示の有無が,互いの信頼行動の発現にどのような影響をもたらすかを験的に調査し,ヒューマンコミュニケーションにおける新しい知見を得た.

■ HIP研究会

1. 番浩志(京大/日本学術振興会)・山本洋紀・花川隆・浦山慎一・福山秀直(京大)・江島義道(京都工芸大) (HIP2006-10)
「遮蔽表面近くの時間的・空間的手掛かりと脳活動との関係 -fMRI研究-」
【選考理由等】
本研究は,厳密で適切な実験条件の吟味によりアモーダル補完の際に高次処理領野だけでなく低次視覚野も応答することを示した.これはこれまで明らかにされていなかったことで,高い貢献度を持つと評価できる.また,文脈情報により低次処理領野であるV1・V2の間にも差異が見られたことは非常に興味深い.論文もまとまりよく書かれており,問題設定,方法論,貢献,今後の課題が明快であった.

2. 高橋康介・齋木潤(京大) (HIP2006-49)
「物体の変形に対する視触覚間同時性判断」
【選考理由等】
覚間情報統合を考える際に,同時性の知覚がどうやって脳内で担保されているのか,そのメカニズムを考えることが重要となる.今回の実験は視触覚をテーマにこの点を検討したもので時間表象のあり方を実証的に示した研究として注目できる.視触覚(もしくは視覚と筋運動感覚系の)同期知覚が,筋運動感覚フィードバックの変化時間に応じて変化し,変化速度や変化量と対応しなかったことを示した研究結果は高く評価できる.

■ MVE研究会

1. 鈴木由里子・井原雅行・小林稔(NTT) (MVE2006-9)
「風インターフェイスによる垂直面への接触感覚の提示」
【選考理由等】
風圧を利用した反力表現という独自の技術提案において,提示方向制御を行うことにより提示可能な方向を水平方向に拡張し,評価実験を通じて、その有効性を示し,結果としてハプティクスの表現力向上に大きく寄与した点が高く評価された.

■ WIT研究会

1. 梶谷勇・樋口哲也 (産総研) (WIT2006-13)
「絶縁物電極を用いた筋電センサの開発」
【選考理由等】
義肢装具のための非侵襲な絶縁物電極を用いた静電型の筋電計測方式の提案と,実際の使用を考慮してアンプの試作、断端袋、シリコンライナーを用いた詳細な分析を行なっている.従来の表面電極では不可能であった,非接触での筋電情報取得の可能性を示している.
開発に成功すると,どのような皮膚状態であっても筋電計測が可能となる.さらに,使用者にとっても不快感を低減できると思われる.また,昨年からシリーズで発表しており着実な進展が見られていることも評価する.

2. 高橋康介・齋木潤(京大) (HIP2006-49)
「視覚障害者向けインテリジェント車椅子”ひとみ”の研究開発」
【選考理由等】
試作品が完成し実際に機能する事が確認されており,他の装置への応用も期待できる.展示会や施設で地道な評価をこない、施設での移動手段として有効性も示している.施設での利用に関して信頼性や有効性を評価できる.また,成熟された既存のテクノロジーを主に用いて,信頼度の高いシステムを構築したことも評価できる.将来性に非常に期待が持てる研究である.