運営委員長のご挨拶(2006年度)

ヒューマンコミュニケーショングループの昨今

2006年度ヒューマンコミュニケーショングループ運営委員長 相澤 清晴(東京大学)

2006年度運営委員長

ヒューマンコミュニケーショングループ(HCG)は,歴史のある伝統的な電子情報通信学会において, ある意味,画期的な組織である.遡れば,95年に本学会が現在のソサイエティ制に移行する時にできた組織であって, 活性化を目指して学会の垂直的な分化を進める際に,水平的にソサイエティ横断的な組織として位置付けられて生まれた.名前からしてすこし柔らかめであるが,情報ハードとソフト指向の学会にあって,“人が中にいるシステム”や “システムの中の人”といった人よりの話題を扱っている.

現在,4つの第一種研究会があり,その他にいくつかの時限研究会がある.小回りのきくグループであるため, 時限研究会の提案も少なからずあり,今年度にもさらに2-3の新しい時限研究会の提案が見込まれている. “人”よりの話題であり,“横断的な”複数の領域にまたがるような話題は,本グループにとてもよく適合する.ヒューマンファクターは,技術が成熟するほど重要さを増す課題であり,今後の情報技術で本グループの対象とする領域は成長を続けるであろう. 新規の提案は歓迎である.

 横断的な特徴を反映して,通常の電子情報通信学会とは,異なったコミュニティからの参加も多く,例えば, 心理関係,福祉関係の研究者も加わっている.(福祉関係では,特に,福祉情報研究専門委員会が活発な活動を行っており, 情報保障マニュアルまで作成し,例えば,聴覚の不自由な人が研究会に参加する時には,主催者側はどのような対応をとればよいかが事細かに書かれている.) 新しいキーワードをもつ研究グループができることも多く,設立当初(95年)に,マルチメディアとか仮想環境といった名称をもつ研究会がいち早くできた. 最近はWebに関する時限研究会もあり,その活動も盛んである.

 これまで,HCGは,小規模で横断的であるがゆえに,研究会関連,大会関連の事業だけに注力してきた.HCGは,直接,論文誌を持っていない. (このため,研究者が論文を出すときは,関連のソサイエティの論文誌に出してきた.また,特集号の企画は,同様に関連ソサイエティへ提案してきた.) そのあり方は,HCGの中でも,長いこと議論の対象でもあった.さらに,ごく最近の各ソサイエティの独立採算化の進行に応じて, HCGはソサイエティになるのか,グループでありつづけるのかについて改めて問いかけられている.運営のためのお金も絡み,深刻な問題である. いままで長く行われた議論を踏まえて,この問題については,今年度のうちに結論を出して,方向付けを行いたいと思っている.

 かなり異なる背景の人が集まるため,HCGには共通の興味で結びつく“同好会的色彩”が強い.学会の基本に立ち返るような重要な部分だと思う. このような組織は,とても貴重だと思っている.